糖尿病を専門的に診療するために2つの見方ならびにその対応が大事と考えます。
- 冷静に個々の病態・状態を把握し、その病態に適した指導ならびに治療薬を選択する
- 生活の一部の病態であり、価値観・生活背景・嗜好・精神的負担なども一緒に考える
糖尿病診療領域において様々な薬剤が各病態やライフスタイルに応じた選択ができる様になってきました。
適切に病態を判断して最適な投薬をすれば、最良の結果は得られるでしょうか?確かに過去に比べて工夫がしやすくなり病態を改善する可能性が高くなりました。
ただし今後どんな薬剤が出てきても100%薬剤だけで良くなる事は無いと思っています。 大事なのは「自身の病態や状態を知り対応できる事」だと考えます。
“Education is not a part of the treatment, it is the treatment.”
「糖尿病教育は治療の一部ではなくそのものである」
Elliott P.Joslin,MD
糖尿病診療をする医療関係者にとって上記の言葉は非常に心に響きます。
ただし教育入院や糖尿病教育という一般的な言葉は個人的には好きではありません。
Educationを訳すと教育になってしまいますが、語源から考えると「外へ導く→能力を引き出す」とい認識になるようです。
知識を一方的に押し付けるのではなく、一緒に対応できるように能力を引き出していく事だと考えます。
もちろんそれだけでは良くなることはなく、食事療法・運動療法・薬物療法といった対応が必要です。
しかし正しく理解する事によりその食事療法・運動療法・薬物療法も非常に効果的になるためEducationが大事と考えます。
日本における糖尿病の教育は基本教育入院という形で行われてきました。
それは1959年に済生会中央病院の堀内光DrがJoslin Clinicに留学され教育の必要性を認識され1961年から教育入院という形で発足しました。
過去には数ヶ月の入院もあった様ですが、1~2週間の入院・週末を利用した2泊3日・1泊入院など入院期間の短縮やあり方も時代とともに変わってきました。
そして最近ではコロナ感染症・ニーズ・病院運営面から糖尿病入院が難しくなり、また外来で行っていた集団糖尿病教室も感染拡大防止の意味から開催が難しくなっています。
「入院から外来での場で」・「集団から個人へ」と時代とともに変わってきています。
診療を受けるにあたりどうしても診察待ち時間が生じてきます。
当院では「診療待ち時間」の認識から「医療スタッフによる診療相談」の時間に変えていければと考えています。
診察までの時間に医療スタッフによる療養指導カードシステムなどを用いた説明・ワンポイント栄養指導・診療相談など予定しています。