体のカルシウムは99%が骨に貯蓄されています。
体のカルシウム濃度は非常に厳密に制御されています。
骨は強度としなやかさの両方を保つために常に骨の再構築(リモデリング:骨のスクラップ&ビルド)をおこなっています。
破骨細胞が古い骨を破壊する役割を果たしており、骨芽細胞が新たな骨を作ります。そのバランスが崩れると骨粗鬆症となります。
カルシウムの吸収・維持には副甲状腺ホルモンやビタミンDなどのホルモンが重要な働きをしています。
骨強度は骨質(骨の構造や、骨を形作る材料の特性)+骨密度(カルシウムなどのミネラル)で規定されます。
骨粗鬆症は骨の量が少なくなり骨の中身(構造)が悪くなる事により、骨の強さが脆くなり骨折しやすくなった状態をいいます。
骨は鉄筋コンクリートに良くたとえられ、骨質は鉄筋・骨密度はコンクリートのイメージが理解しやすいです。
骨強度が低下する原因として糖尿病(1型糖尿病では3~7倍、2型糖尿病では1.3~2.8倍)・ビタミンDの不足(日照不足など)・加齢・女性の場合閉経後の女性ホルモン低下(高回転型の骨粗鬆症)などがあります。
<骨密度を測定する検査>
二重エネルギーX線吸収法(DEXA):骨に2種類異なるエネルギーのX線を当て、骨量を測定します。
骨粗鬆症の検査では腰椎・大腿骨・手首の骨などを測定部位とします。
この検査の特徴として、通常のレントゲン写真撮影に比べて被ばく量は少なく、各種骨量検査法の中では精度が高いという特徴がありますが、検査できる施設は限られます。
骨粗鬆症の診断・治療効果の確認・モニタリングに適しています。
新しい応用方法のTrabecular Bone Score(TBS)は計算できる骨構造特性指標として期待され、骨質を推定します。
MD法:アルミニウム板がある台に手のひらを載せてX線撮影し、第二中手骨とアルミニウムの濃度を比較して骨密度を測ります。
骨粗鬆症の診断にも用いることができ、一般的なX線撮影装置で簡便に撮影できます。DEXA法に比べて精度は落ちますが診断には有用です。
しかし治療効果の判断は難しいとされます。
定量的超音波測定法(QUS):
超音波伝播速度(speed of sound)が骨密度に比例することから、超音波が骨に伝わる速度より骨密度を測定します。
測定部位は踵骨と脛骨で行う場合があります。
短時間で被ばくがないことから骨粗鬆症スクリーニングとして自治体が行う検診などで行われます。
しかし診断や治療効果判定はできません。
<骨代謝のバランスを調べる骨代謝マーカー検査>
骨は骨代謝もしくは骨リモデリングという、古い骨を溶かす骨吸収と、溶かされた部分に新たな骨を作る骨形成というサイクルによって常に作り替えられています。
骨代謝マーカーは骨代謝のバランスを調べるもので、血液や尿の検査によって測定されます。リモデリングの状況を推測するのに有用です。
骨形成マーカー:P1NP・BAP(日内変動なし)
骨吸収マーカー:TRACP―5b(日内変動なし)、NTX、DPD
骨マトリックス(基質)関連マーカー:ucOC
<骨粗鬆症の診断>
骨粗鬆症の診断は、脆弱性骨折の既往・骨密度で診断されます。
また同時に骨代謝に影響を与える要因の鑑別が必要です。
内分泌疾患として糖尿病・クッシング症候群・サブクリニカルクッシング症候群・原発性副甲状腺機能亢進症・甲状腺機能亢進症・ビタミンD欠乏症など確認が必要です。
またステロイド治療薬の使用歴・他疾患(関節リウマチや肝硬変など)・栄養不足もスクリーニング必要です。
将来の骨折危険度を判定するFRAX®があります。
FRAX®は世界保健機関(WHO)の国際共同研究グループが作成したプログラムで、40歳以上を対象に骨粗鬆症による骨折が今後10年のうちに発生する確率を計算します。
骨粗鬆症による骨折の発症にかかわる様々な危険因子のうち12の因子(大腿骨頸部のBMDを入力しない場合は11の因子)について入力すると、主な骨粗鬆症性骨折の今後10年間における発生率(%)を得ることができます。
骨粗鬆症の薬物治療開始の目安は脆弱性骨折既往有無・骨密度・FRAX®によるリスク推測・大腿骨近位部骨折家族歴となります。
<治療方法~骨粗鬆症治療薬・食事療法・運動指導>
薬物療法
・骨吸収抑制薬 ビスホスホネート(骨吸収を抑えることで、骨量(骨密度)を増やす働き)
・選択的エストロゲン受容体作働薬(SERM)(破骨細胞の働きを抑える女性ホルモンのエストロゲンと同じ作用を発揮し、骨量(骨密度)を増やす効果)
・抗RANKL抗体(RANKLとは、破骨細胞の形成・活性化などを促進する蛋白質に作用することで、骨吸収を抑制)
・骨形成薬 副甲状腺ホルモン薬
・骨吸収を抑え・骨形成を促進 抗スクレロスチン抗体
・必要な材料の補充や骨代謝をサポート カルシウム・活性型ビタミンD3製剤・ビタミンK2
食事療法:
一日700~800㎎のカルシウム摂取・カルシウム吸収を促進するビタミンD摂取・ビタミンK摂取を心がける必要があります。
一日推定カルシウム摂取の把握にはカルシウム自己チェック表があり当てはまる項目を確認することで摂取量が分かります。
大まかな目安として点数×40㎎/日で摂取量が推定できます。
しかし安易に食事外のサプリメントやカルシウム製剤でカルシウムを補充すると心血管疾患のリスクが上昇する報告があり注意が必要です。
また加工食品などリンを多く含む食材や食塩・カフェイン・アルコール摂取は控える事が望ましいとされます。
運動指導:
運動による骨密度上昇や骨折リスク軽減に効果があるとされています。
特に閉経後の骨塩減少・骨粗鬆症患者様に有用とされますが、年齢・活動性・転倒リスク・骨折危険度を考慮して無理なく継続できる運動が望ましいとされます。
骨粗鬆症の初期は特に症状の自覚はありません。
椎骨が変形すると背が縮んだり、腰痛を自覚したり転倒しやすくなったりします。
特に大体頸部骨折は寝たきりの原因にもなり、生命予後にもかかわってきます。
様々な要因で骨代謝に影響がでてきます。
当院医療相談時にFRAX®の骨折予想や栄養士による食事指導なども可能です。
当院では測定精度の高いDEXAでの検査が可能ですので、お気軽にご相談ください。