脂肪1㎏は約7000kcalを消費しないと減少しないため、体重管理にむけて食事摂取や運動の方向性を確認するため現状を把握する必要があります。間接カロリーメーターを用いて安静時基礎代謝量・運動消費量を実測する事はなかなか大変ですが、推定する計算式がありますのでご紹介させていただきます。
<安静時基礎代謝推定>
1)厚生労働省の式:日本人の食事摂取基準2015・2020年度版
日本人の年代別基礎代謝基準値になります。加齢とともに筋肉量などの除脂肪量が減少する事により総エネルギー消費量が変わってきます。体重と年齢(層別分類)で安静時基礎代謝量を推定します。ただし標準的な体重の場合には問題ありませんが、極端に体重が偏る場合には誤差が大きくなります。極端な肥満ややせの状態には判断に適していません。肥満では過大評価(多く計算)にやせでは過少評価(少なく計算)してしまいます。
安静時基礎代謝量(kcal/日)=基礎代謝基準値(kcal/kg/日) ×体重(kg)
2)国立健康・栄養研究所の式(Ganpuleの式)
上記の厚生労働省の式とは異なりBMI30㎏/m2程度までなら誤差を生じないとされます。特に標準体重から離れた場合にはGanpuleの式で計算すべきと考えます。
3)Harris-Benedict の式(日本版)
病院入院中患者様の栄養管理の指標(NST活動)や学会でよく用いられる計算式になります。ただし全体として過大評価の傾向にある(特に全年齢階級の女性と 20〜49 歳の男性で著しい)と報告されています。
4)Mifflin-St Jeorの式
Harris-Benedictの過大評価を修正したとされる1990年に提案された計算式になります。おおよそHarris-Benedictの結果の95%とされます。Ganpuleの結果と近いようです。
男性:9.99×体重(kg)+6.25×身長(cm)-4.92×年齢+5
女性:9.99×体重(kg)+6.25x身長(cm)-4.92×年齢-161
5)Schofield の式、FAO/WHO/UNUの式
国際的に使用されている計算式になります。体重のみのパラメーター又は身長・体重のパラメーターで、年齢や性別は考慮されていない計算式になります。
上記表は厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書P72・74から
6)Katch-McArdle式の式 :除脂肪体重・体重から計算
体組成計で測定した体重・除脂肪体重から安静時基礎代謝量を推定する計算式になります。基礎代謝量は体重よりも除脂肪量と強い相関が見られ、今後適切な身体組成の評価により、精度高く基礎代謝量が推定できる可能性があるとされます。
Katch-McArdle式 基礎代謝量=370+21.6×(体重 -(体重×体脂肪率))
上記1)~5)は性別・年齢・身長・体重から推定する計算式でしたが、6)は筋肉量などを重視し、体重・除脂肪体重からの計算になります。体重が同じであれば、筋肉量が多い場合と少ない場合でも1)~5)は同じ安静時基礎代謝量の推定となりますが、6)は除脂肪体重・体重から推定する事によりこの問題の対策をしています。
安静時基礎代謝は骨格筋22%・脂肪組織4%・肝臓21%・脳20%・心臓9%・腎臓8%・その他16%で規定されます。安静時基礎代謝を増やすためには筋肉量を増やすのが目標として立てやすいと考えます。また内臓由来の基礎代謝を落とさないために、冷たいものなどの過剰摂取を控える(冷えると代謝低下)・腸内環境を整える(食物繊維や乳製品など摂取)・節酒(内臓を冷やしたり負担の原因)・バランスよく食事摂取(特に適切な蛋白質摂取は食事誘発性熱産生が多く、アミノ酸摂取は脂肪が燃焼されやすくなります)が有用とされます。また極端な食事制限は逆効果となることが多いとされます。