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生活習慣の改善を1年継続してみて~医師のメタボ対策試行錯誤~

2024.04.16
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もうすぐ当院を開院して約1年が経とうとしています。前医療機関を2023年3月31日に退職しましたが、一念発起し2023年4月1日から生活習慣の改善に取り組んできました。きっかけは雇用される立場から雇用する立場となり責任を大きく感じた事と、生活習慣病を説明する医師がメタボで良いのか?という当たり前の疑問に今更ながら改善しようと決意をしました。ガイドラインや様々な書籍などを読み解き、無理なく継続できる方法は何かと思いながら試行錯誤した結果から個人的に思ったことを記事にしています。

上の新聞の切り抜きは愛媛大学医学部附属病院在籍時です。栄養療法外来として外来医として対応していましたが、取材撮影時に私が患者役になっていました。

<メタボ医師の自己反省ならびに1年間の試行錯誤の経験日記>

  • 2023年3月末 生活習慣改善を決心
  • 2023年4月  ジム入会し水泳・水中歩行(泳げば痩せる?)
  • 2023年5月  月15回泳いでも減らない→下肢の筋トレ始めてみる(自重トレーニング)
  • 2023年7月  1kg/週の体重減少するも脂肪は変わらず、筋量減少が続く→蛋白摂取意識開始
  • 2023年7月末 上肢の筋トレも開始
  • 2023年8月  昼食事時の蛋白摂取不足のためプロテイン摂取開始(置き換えダイエット)
  • 2023年11月  有酸素運動(3METSの散歩)を可能な時に意識

経験はなかったですがラグビーに大学で出会い、「しんどいの嫌やし~・痛いの嫌やし~・走るの嫌やし~」の自己三箇条は貫きながらも5年の間にある程度は体重は減少。運動で消費カロリーを稼いでいましたが、運動量低下にも関わらず食事量は変わらず増加。その後複数回にわたり糖質制限(エネルギー制限)で体重管理に一時的に成功するもすぐリバウンド。体重も落ちましたが筋量も低下し基礎代謝低下。通勤中のちょっとした間食・土日や夜間病院当直時の間食・昼食事に炭水化物中心の食事(カップ麺・おにぎり)など心当たりは沢山。週末の外食習慣もあり。前医療機関退職後2023年4月から生活習慣改善に取り組み開始。取り組んだ事は、間食を一切中止し運動が必要と思い「水泳なら全身運動だ!」と安直な考えで4月だけで15日通うもの一切減らず。減らなかった原因は、開院前の準備期間中の昼食弁当がカロリーオーバー(800~1000kcal)で運動消費量以上の摂取に後で気づく。でも少しは変わった?と自己満足。5月の開院を迎えて昼食事が200~300kcal(蛋白をとれるパンなど)と簡単になり、有酸素運動の水泳を週2日に減ったものの継続。体重横這いで推移するため下肢筋トレを5月から軽く開始。筋トレ方法は完全に間違っていましたが、朝起床時・夕食後に下肢の筋トレ(バックランジ・ブルガリアンスクワット)を毎日3~5分/回程度。食事摂取カロリーが減り有酸素運動・筋トレ併用のためか7月初旬(生活習慣改善意識して3か月目)には8㎏体重減少。しかし体重は週に1kgずつ減っていくものの、体脂肪は変化少なく筋量が減少。原因として極端な摂取カロリー不足(基礎代謝1800kcalに対して摂取カロリー1600kcal)と蛋白摂取不足(40~50g/日)と考え、食事内容を見直し。基礎代謝を下まわらない摂取量と出来るだけ蛋白摂取を食事でとれるように意識。結果筋量減少は止まるも、上下肢のバランス不均等改善のため下肢に加え上肢の筋トレも開始。昼食で必要栄養素を摂取しにくいため、一食置き換えダイエット(糖質・蛋白取れる食事+プロテイン追加)に変更。体重7㎏減少・腹囲12㎝減少を達成するも水泳などのある程度高負荷有酸素運動を週2回ではなく、日常から少しずつ有酸素運動での消費カロリー稼ぐことを2023年11月から意識。体重増減に一喜一憂せず、生活習慣の是正を楽しんで現在も継続できています。下に個人的に意識していることを箇条書きにしておきます。ただし色々なやり方や考え方もあるので参考までに。

  • 基礎代謝量を下回らない食事をする(朝欠食や夕の炭水化物は抜かないことも大事)
  • 一日消費カロリーを出来るだけ超えないように食事を計算(100~200kcalマイナスに留める)
  • ずっと継続は大変なので息抜きするときは遠慮なく食べる(抜く時は抜く)
  • 蛋白摂取を体重当たり1g以上を3食で均等に取る(減量時には蛋白摂取少ないのはリスク)
  • 時間なく簡単に食事する場合には、置き換えダイエットや定番のメニューを固定化
  • 3METS程度の有酸素は出来るだけ少しずつ毎日積み重ねる(20分/日を分割して)
  • 4METS以上の運動は心肺機能を維持するために行い、一回30分以上はしない
  • 基礎代謝を落とさずある程度きちんと落とすためには筋トレ不可欠(週2~3回まで)
  • 短期間の目標を立てたり、結果に対して一喜一憂しない
  • 生活習慣の改善を楽しんで、長い期間でみてみる視点を大事に

<医療機関の食事指導・運動指導:個別対応が実は得意ではない>

糖尿病・高血圧症・高脂血症・肥満症などの生活習慣病に対してよく栄養指導や生活指導をうける事が多いと思います。指示内容としては一日に摂取すべきカロリーや塩分摂取を指示し、腎機能低下時には蛋白制限などを追加します。しかしこの摂取すべきカロリーや目標とすべき体重は個別差が大きい場合には対応が難しい現実もあります。

上記は糖尿病学会から糖尿病患者様向け資材「健康食スタートブック」から理想体重ならびに活動係数の表になります。一般的に身体にとって負担が少ないとされる標準体重BMI22kg/m2を目標にされます。しかし現在の体格が筋肉量が多いのか体脂肪が多いのかの判断は入らず、押しなべて標準体重に近づける設定となります。例えば60歳身長160㎝体重90㎏であればBMI35.2㎏/m2ですが、56.3㎏を目標体重と設定されます。この体重に活動係数を掛け算することになります。この掛け算も25~30、30~35、35~と一応区分わけされていますが、どの係数をかけるかの具体的な指標はありません。少し前までであれば肥満あれば25・運動量が多ければ30・困ったら中庸の28などで決める事が多かったですが、多様性に対応できるように選択できる数値が幅広くなりました。しかし個別にどういった数値を選択するかは明確な指標はなく主治医各自判断で決める事が多いのではないでしょうか。食事摂取カロリーは理想体重×活動係数で計算されます。そして食事の内訳は炭水化物50~60%・蛋白質13~20%・脂質を残りでとされますが、炭水化物60%蛋白15%脂質25%とされる事が多いと思います。そのため摂取する栄養も総摂取カロリー(目標体重から計算)に依存します。そのため例えば身長160㎝・60㎏の方と160㎝・80㎏の方両方とも同じ総摂取カロリー・栄養素摂取量となってしまいます。生活習慣の改善に運動は有効ですが、医療機関から具体的な有酸素運動種目や運動時間・筋トレの種目や指導は難しいのではないかと思います。無理ない程度に散歩など有酸素運動を取り入れていきましょうと説明されることが多いのではないかと思います。「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」が2023年に発表され色々SNSなど物議を醸したのはまだ記憶に新しいかと思います(当院のお知らせブログでも紹介させていただきました)。すぐに可能か不可能かはおいておいて、よく考えられた内容だと個人的には思っています。実施可能な継続できる目標設定ならびに改善方法を考える必要があると思います。

<内臓肥満・肥満の理由を考えてみよう!>

  • 摂取カロリー>消費カロリー
  • 消費カロリー=基礎代謝+食事誘発性熱産生+NEAT(家事など日常生活の非運動性活動)+運動
  • 基礎代謝:370+21.6×(体重 -(体重×体脂肪率))kcal
  • 食事誘発性熱産生:食事摂取の約10%分カロリー(ただし蛋白30%・炭水化物6%・脂質4%)
  • NEAT=日常生活の運動量であり約2000歩、座位行動が多い場合には少なくなる
  • 運動には有酸素運動・筋トレのレジスタンス運動・多要素な運動(ラジオ体操・社交ダンスなど)

脂肪が増える原因は摂取カロリー>消費カロリーが続くため過剰なエネルギーを貯蓄した結果となります。消費カロリーはその多くを基礎代謝が占めています。推定する色々な方法がありますが、一つの計算方法として除脂肪体重から計算する方法があります。つまり骨格筋量が多ければ基礎代謝は増加し、逆に少なくなれば低下します。食事をすると体温が上がりますが、摂取エネルギーの約10%は体温となり消費(食事誘発性熱産生)されます。ただし炭水化物や脂質中心の食事になると熱産生による消費カロリーは少なくなり、吸収されるカロリーが増えて脂肪が増えやすくなります。運動消費にはNEATとよばれる日常生活の非運動性活動と運動に分かれます。NEATは2000歩/日と計算されますが、座位行動が多いと1000歩以下/日かもしれません。肥満者では座位行動時間が長いとされます。運動には有酸素運動や筋トレなど様々な運動がありますが、仕事や家庭を持つとなかなか余裕がなく出来ないと認識される方が多いのではないかと思います。

  • 一日のトータル摂取カロリーが普通に多い
  • 3食の炭水化物を減らしていても、間食で糖質を足す
  • ごはん、麺類、菓子パンなど炭水化物中心の食事が大好き
  • 糖質と脂ものが大好き(ドーナッツ・ポテトチップス・フライドポテト・ピザなど)
  • 夕食が遅い
  • 夕食の後に間食習慣(風呂上り後のアイス・スナック菓子・果物など)
  • 朝食を欠食、昼を簡単にすます(おにぎり・菓子パン・カップ麺・茶漬け・冷凍ピラフなど)
  • 蛋白摂取が少ない
  • 食事内容を変えずに、ただ炭水化物を抜く

上記によく見聞きする食行動をリストアップしてみました。体重(脂肪)が増える原因はいわゆる「食べ過ぎ」です。消費出来るカロリー以上に摂取すると余剰分は脂肪として蓄積されます。運動習慣があった人が社会人になり運動しなくなった場合など、現役時代と食事摂取量はかわらず運動による消費が極端に減った場合は体重が増加している事が多いです。また食事としては過剰にとっていない(または糖質制限などして控えている場合も)つもりでも、一日の中でちょこちょこと菓子類・スナックなど摂取して一日トータルで過剰に取ってしまっている場合があります。その場合糖質制限しているつもりが糖質過剰になっている事も多く見られます。またとっているカロリーが極端に過剰でなくても、糖質中心の食事(麺類・丼もの・菓子パン・炭水化物だけの食事)や脂質が多い食事の場合には脂肪が増えやすいとされます。GI値の高い食事を繰り返す場合には血糖が上昇するリスク・インスリン過剰分泌による反応性低血糖回避のための過食や体脂肪増加する可能性があります。上記に記載しましたが糖質と脂質は食事誘発性熱産生の割合が少なく、より体に貯蓄するエネルギーが増える可能性が高くなります。特に脂質と糖質が多い食事の組み合わせには注意が必要です。また食事のタイミングが問題になることがあります。夕食が遅くなる・夕食後に糖質摂取することが脂肪増加につながりやすいとされます。また朝食欠食・昼食事が特に糖質中心の食事の場合には食事摂取後に血糖上昇・高インスリン血症になりやすく脂肪がたまりやすくなります。また一日で取る蛋白摂取が少なかったり、蛋白摂取を増やさずにカロリーバランスをマイナスにする糖質制限をする場合には、体重は減りますが脂肪だけではなく筋肉量の減りが早くなります。そのため体形が変わらなかったり、基礎代謝が低下する事により体重が減らなくなり・リバウンドしやすくなります。上記を踏まえ、摂取カロリーが過剰になっていないか・消費カロリーを落としていないかを考える必要があると思います。

<無理なく生活習慣を改善するためには>

  • 食事摂取カロリーは基礎代謝以上・一日消費エネルギー未満を目標に
  • 減量時には蛋白1g/体重1kg以上を摂取目標に
  • 朝・昼の食事の決まったローテーションを決め、夕は糖質控えめにある程度自由に
  • GI値の高い炭水化物過剰摂取や間食をできるだけ控える
  • 有酸素運動を日常生活に無理なくとり入れていく(2000歩/日以上を目安に)
  • 食事制限と運動の合わせ技で体重管理
  • 強度の高すぎない有酸素運動は脂肪を減らす運動
  • 筋トレは筋肉を落とさない(可能なら増やす)運動

BMI30~35の方が急にBMI22の食事を行う事は色々無理が生じます。急なカロリー制限となり継続が難しいこと・基礎代謝以下のカロリー設定になる可能性が高いこと・現在の体重に必要な栄養素を摂取できないなどの問題があります。特に基礎代謝以下の食事摂取は代謝を落としてしまい、エネルギー制限の効果が得られにくくなります。一日消費エネルギーは基礎代謝に運動量(運動+NEAT)+食事誘発性熱産生を足したものですが、ある程度活動している人は基礎代謝に×1.3倍、運動量が少ない人は×1.2倍で説明を私はしています。個別詳細で考えていくとNEAT1000歩計算で体重の半分・2000歩で体重分のカロリー、運動習慣量の平均カロリー(20分散歩毎日で体重分)、食事誘発性熱産生として摂取の8~10%となります。1800kcalが目標で現在体重が80㎏の場合で運動習慣が無い場合には基礎代謝+300kcal前後となります。一日消費量から最大減らせられる余裕は100~400kcal程度しかないので、食事だけで減量は難しいです。またエネルギー制限を過剰にすると蛋白を摂取することが難しくなります。一般的には蛋白質から13~20%でエネルギー摂取を推奨されていますが、現実的に10%後半を摂取している方はまれであまりとれていません。蛋白摂取比率を数パーセント上げるためには食事内容を大きく見直す必要があります。体重が増えているときにはあまり蛋白摂取を意識しなくても維持できます。しかし摂取エネルギーをマイナスバランスにしたときに蛋白摂取不足すると筋量が大幅に低下する場合があり、十分量を摂ることが必要になってきます。現体重当たり最低蛋白1g/㎏以上を摂る事を勧めています。ただし腎機能・肝機能への影響もあり個別で確認相談が必要です。炭水化物は生体維持に必要な栄養素ですが、一日消費カロリー以内に収める程度に控えることが必要になります。また菓子類などの糖質は高インスリン血症を来し脂肪合成をすすめ、食欲増進につながるため食事をしっかりとる事が大事と考えます。無理なく継続するため、消費カロリーからマイナス100-200kcalにカロリー制限を止めてしっかり必要な栄養素を確保したほうが良いと考えます。蛋白摂取やカロリーの計算がめんどくさいと思う方には、朝・昼をある程度固定化(組み合わせ出来るようにパターン化)して夕は糖質過剰にならないようにある程度自由に食事をとる方法も長続きする方法かもしれません。体を動かさないと体力・筋力が低下してきます。有酸素運動として3METS程度の散歩を無理なく一日で2000歩から勧めています。時間にして約20分の散歩ですが一気に行う必要はなく、小分けにして朝10分・昼5分・夕5分でも構わないと説明しています。20分の散歩は体重分のカロリーを消費できる計算(80kgの方であれば80kcal)となります。また意識で変わる事として座位行動をできるだけ継続しないことを説明しています。NEATの増加につながり運動と認識しない運動量を増やす事ができるようになります。食事で100kcal・運動で100kcalの合計200kcal/日マイナスを継続できる目標とし、月に6000kcalのマイナス・年に72000kcalを説明しています。ただ毎日継続するのは難しく許容範囲で息抜きも大事です。また体重が減っていくと食事を注意しても筋肉量は減っていきます。そのため筋量を減らさないため週2日の筋トレ(下肢をまず第一番に)することが重要です。前述したとおり筋量低下は基礎代謝を低下させ、体重が減らない・リバウンドにつながります。まずは無理なく出来る散歩から運動を始めて、体調をみて試していくのはいかがでしょうか。

<最後に>

  • 生活習慣を改善しようと思えることが素晴らしい(一番大事な事)
  • どんな事でも継続することが素晴らしい
  • モチベーションや効率をよくするため、知ろうとすることが素晴らしい
  • 生活習慣を変える苦痛から、楽しみながら取り組めたら最高

このままではいけないと思いながらも、なかなか習慣は変えられないことも事実です。その一方で何かを変えていかないと焦ったことも多いのではないでしょうか。何かを変えようと思う気持ちが最大で大事な事だと思います。結果はなかなかすぐには出せるものではないですが、何か継続できればいずれ結果はついてくると思います。モチベーションを維持するためには知る事も大事とおもいます。生活習慣の改善についてお気軽にご相談ください。

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