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長期間を見越した体重管理(減量)について

2023.11.27
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以前の記事で体重を減らす可能性がある薬剤をまとめましたが、日本では約30年ぶりに抗肥満薬として「ウゴービ(セマグルチド)」が2023年11月22日に保険認可されました。セマグルチドは従来2型糖尿病治療薬として用いられますが、食欲を抑えることにより体重減少も期待できる薬剤です。今回新たに肥満症治療薬として認可されるにあたり、薬価を安く設定し生活習慣病管理の一環として広く使用可能になるのかと期待しましたが、医療費・薬剤流通量・適応疾患からも非常に厳しいと考えます。ウゴービに期待されていた方も多かったのですが、生活習慣を正すのに薬剤ありきでは一生薬剤を中止する事が出来ないことになり、常日頃から食事・運動などの生活習慣を見直す重要性を改めて認識する機会になるのではないかと思います。セマグルチド以外にもチルゼパチドなど体重減少を期待して用いている場合がありますが、薬剤のサポートがある期間に正しい生活習慣を見直して薬剤なしでも継続できるように考えていく必要があると考えます。生活習慣病を改善のため体重を管理する事について考える事を記載させていただきます。

「減量」生活習慣病を減らし改善する・健康寿命を延ばす・メンタルヘルスに良い効果をもたらすなど様々なメリットがあります。従来減量の相談を受けた際に、私も「食事摂取を減らすように(ただ炭水化物や糖質を減らす食事など)」・「有酸素運動をなんとなく増やすように」等の説明をしていました。糖尿病診療ガイドライン・肥満症診療ガイドラインなどを参考に食事摂取カロリーを設定し、有酸素運動を説明していました。体組成の変化を様々な多くの患者様の経過を見させていただき、自身の経験(メタボ医師の減量試行錯誤日記を参照)から食事設定や運動指導の見方もかわりました。色々な方法はあると思いますが、無理なく続けるために私が大事と思うことをまとめます。当クリニックで質問があったり必要と思われる場合に説明している内容となります。

  • 減量は体重を減らすことではなく、体脂肪率を減らす事を主眼に
  • 除脂肪体重をできるだけ減らさない又は増やす事が必要
  • 現在の一日消費カロリーを推定し、経過で消費推定値を修正する
  • 「消費カロリー>摂取カロリー」の原則を徹底
  • PFCバランスを大事に、特に蛋白摂取を十分に
  • 摂取量を把握するため、「炭水化物」・「蛋白」摂取の量を計算できるように
  • 有酸素運動は必須、日常生活の延長で少しずつ増やす(無理をしない)
  • 筋トレも必須、短期間ではなく長期間の結果を見据えた管理のために
  • まず始めてみる事が大事
  • 短期間の結果に関わらず、続けることが大事(無理をしない・結果を求めすぎない)
  • モチベーションを維持するため知識を得る事

<糖尿病診療ガイドライン・肥満症診療ガイドラインの難しいところ>

ガイドラインは診療の質を維持し、適切な診療ができるようにと作成されたものです。どのような患者様に対しても、医療機関・診療に携わる医療者による差が極力なく同じ医療が提供されることに役立つものと考えます。目標(健康)に向かって大多数が良いとされる平均となれるように設定されています。目標とする体重は標準体重(一般的に生命リスクが少ない)を中心に考えられ、近づけるような食事を指導されます。ここでウゴービの記事で紹介させていただいた一例を踏まえて考えていきたいと思います。ガイドライン上、目標体重は多くの場合標準体重(BMI22)と考えられます。糖尿病診療ガイドラインでは食事摂取カロリー計算するうえで係数25~35以上×標準体重とかなり幅がありますが、係数設定はかなりあいまいになります。肥満症診療ガイドラインではBMIが35を超えると20~25×目標体重以下kcalとかなり厳しい設定となります。この設定は現時点での除脂肪体重や脂肪量は考慮されませんBMI22の体重に近づく食事であり、肥満症を肥満にする食事とも言えます。また運動週に150~300分(一日30分以上~60分以上)の有酸素運動ならびにレジスタンス運動の併用や座位行動を減らすことが指導されます。

  • 40歳男性
  • 身長169㎝
  • 体重100㎏(計算しやすいように想定)
  • BMI35kg/m2
  • 体脂肪率35%

分かりやすく上記症例で詳細を考えてみたいと思います。169㎝であることから、62.8kg(標準体重BMI22)に近づく様な食事となります。BMIが35を超えることから肥満症診療ガイドラインでは1256~1570kcal/日未満の食事となります。150分/週の有酸素運動(3METSの散歩)をすると112.5kcal/日の消費カロリーとなります。ここで安静時基礎代謝量を考えてみます。国立健康栄養研究所の式では1860kcal・Katch-McAdle(除脂肪体重からの計算、体脂肪率35%の場合)では1774kcalとなります。一日消費カロリーは基礎代謝+運動量(運動+NEAT)+食事誘発性熱産生で規定されます。食事誘発性熱産生は食事をすることにより体温が上昇することによる消費カロリーの増加になります。蛋白・脂質・炭水化物によりそれぞれ熱産生効率は変わりますが、おおむね摂取した食事の10%と計算します。指導された1256~1770kcalの10%となるため126~177kcalの熱産生となります。運動量を合わせると239~290kcalとなります。さらに運動消費としてNEAT(家事などの日常生活活動などの非運動性活動non-exercise activity thermogenesis)が加わるため300~400kcalの運動・食事による消費カロリーと概算されます。基礎代謝を除脂肪体重から計算されたものを採用すると、1774kcalで運動・食事による消費カロリーが300~400kcalとなると一日消費カロリー(肥満症診療ガイドラインの指導)は2074~2174kcalとなります。食事設定は1256~1570kcal未満のためカロリーバランスは604~818kcal/日のマイナスとなります。また肥満症診療ガイドラインでは食事設定が基礎代謝を下回ることになります。過剰なマイナスバランスや基礎代謝カロリー以下の一日食事摂取設定は、基礎代謝を下げてしまい脂肪を減らすことが難しくなるとされます。少なくはない食事から厳しいエネルギー制限では、継続が難しいと思われます。また食事はカロリーというエネルギー量だけではなく、必要な栄養素を取る必要があります。摂取エネルギーを減らすことは必要な栄養素を十分とる事が難しくなります。三大栄養素だけを考えても炭水化物・脂質は増減はある程度可能ですが、蛋白摂取を限られた摂取エネルギー量のなかで十分な量を取る事は非常に難しくなります。一般的に蛋白摂取カロリー/全体摂取カロリーは13~20%と推奨されています。特に肥満改善に糖質を控えることは有用で、結果相対的に蛋白摂取によるエネルギー量のパーセントはあがるとガイドラインには記載されています。しかしあくまで全体摂取が低下する事による蛋白摂取割合の相対的増加であって絶対量は変わりません。減量するときには蛋白摂取を増やす必要があり、カロリー制限と相反することになります。過剰な制限は十分な栄養素を摂ることのハードルが高くなってしまいます。ある程度短期間に体重を減らす目標のためには、一日摂取カロリー<一日消費のルールを厳しくする必要があり、必然的に一日摂取カロリーは低く設定されます。しかし冷静にみると長期的には難しい事であると思います。

  • 過剰なエネルギー制限(特に糖質だけ中心に制限)と運動は、
  • 食事や運動の目標を達成することが困難
  • 継続する事が難しい事が多い(モチベーション維持困難)
  • 基礎代謝以下の食事は、効率が低下する
  • 必要な栄養素を摂ることが難しくなる
  • 結果、筋肉量だけ低下し脂肪は変化が少なくなる可能性も

<当院で説明している基本方針>

体重を減らす必要はあると思いますが、個々に応じて減量する目標は異なってきます。例えば筋量が多い人に対して、脂肪に加えて筋量も大幅に減量する必要はありません。やや肥満気味だけど食事をしっかり摂取し元気に動けている人は、食事摂取を減らして痩せたけど動けなくなってしまう可能性もあります。減量すべきは体重ではなく脂肪量と考えていく必要があります。体成分のうち除脂肪体重(筋肉量など)は出来るだけ維持または増加しないと、低下する事により活動性が低下したり基礎代謝が低下し太りやすい体質になります。体脂肪量は出来るだけ減らし、除脂肪体重は維持または増加する必要があることから体脂肪率を減らすことが必要と考えます。短期間で結果を考えるのではなく、無理なく継続でき、健康でいられるように以下のポイントを説明しています。

  • 食事摂取エネルギー量は、運動習慣のない時の一日消費カロリーの90%程度(100~200kcal/日程度のマイナスにとどめる)
  • 欠食を避け3食バランスよくたべる(特に朝食は大事)
  • 減量目的時にはできるだけ一日の食事の中で、均等に蛋白摂取を十分量摂取
  • 糖質が多い食べ物(他栄養素が少ない)は出来るだけ避ける
  • 有酸素運動は必須(0の習慣から1へ、まず一日の中で分割して2000歩あるく 60~80kcal/日)
  • 日常生活の中で運動と思わない運動を増やす(座りっぱなしをさけ、ちょっとずつ動くイメージ)
  • 筋トレも可能なら必須(週2日下肢筋トレから開始)
  • 短期間で結果を求めない、正しい方法で継続できれば結果は自ずとついてくる
  • 体重は減らなくても体脂肪や体脂肪率が変化したり、見た目が変わればOK

短期間で変化を求めると上記で説明させていただいた通り、過剰な食事制限となり目標達成や継続が難しくなります。1~3ヶ月の結果ではなく半年~1年後以降にどう変わるかが大事と考えています。食事だけでカロリーバランスを調整ではなく、少しの有酸素運動を増やすことで食事内容にゆとりができます。必要な栄養素摂取・食事内容を選ぶ余裕ができ継続にあたりストレスの軽減になります。20分(2000歩)歩いて100kcal未満なら食事を控えて動きたくないという方もおられます。しかしそれを突き詰めると、食事をとらず動かず寝たままで体重を減らす(例えば入院生活で食事できず、安静が必要な場合など)事が健康か?と言われれば違うと認識されると思います。20分の散歩といってもまとめて20分ではなく、朝仕事前に10分、昼休憩に5分、仕事終わりに5分など細かく切ってトータル20分で良いので有酸素運動を始めてみる事をお勧めしています。一日が60kcalの運動でも1年続けると21900kcalと約脂肪3㎏のエネルギー量になります。またNEATと呼ばれる日常生活の運動を増やすことも有用です。ちょっとずつ動く習慣をつけて意識した有酸素運動を継続できると、無理なく消費カロリーを稼ぐことができます。また減量となる消費カロリー>摂取カロリーとなると体脂肪だけではなく筋肉も一緒に減量します。筋量低下は太りやすくなる原因にもなりますし、身体活動能力の低下になり出来るだけ避けたいと考えます。そのためには十分な蛋白摂取ならびに適度な筋トレが必須になってきます。筋トレといってもジムなどでトレーニングが必須ではなく、下肢を中心とした自重トレーニングから始めてみることを勧めています。下肢スロートレーニング・スクワット・バックランジ・ブルガリアンスクワットなど体力に応じた内容も相談させていただき説明しています。食事に関してひたすらカロリーを控える食事の制限ではなく、必要な栄養素(例えば蛋白)を考えて取りに行く説明をしています。ただカロリーオーバーしないように必要な栄養素を摂ることを毎日考えるのが大変な場合には、朝・昼(どうしても必要栄養素が不足しがち)などある程度決まった食事の組み合わせのコンビネーションを複数用意して、夕はある程度自由に基本食事を楽しむなどメリハリをつけた食生活なども説明しています。

<最後に大事な事をまとめ>

「いつか頑張る」から「今から少しでもやる」といった気持ちが非常に大事です。始めたのちに短期間で結果を気にせず継続できる事が次に大事です。何とかしようと思って無理した1週間ではなく、無理せずに続けることができれば1年後以降の結果は変わってきます。ただ闇くもに頑張っても不安やモチベーションを維持できにくいため、自身の健康状態や方向性の知識を得る事が大事になってきます。健康相談や食事・運動の相談をさせていただきますのでお気軽に申し出ください。

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