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アライ(オルリスタット)について

2024.03.13
  • 医療の豆知識

以前当院ブログにて体重減少に有用な薬剤について情報のまとめさせていただきました。その中で脂肪吸収を抑制する事により体脂肪を減らす可能性がある薬剤としてアライについても情報提供させていただきました。2023年2月に厚生労働省から製造承認がおりていましたが、2024年4月8日に発売が決まり話題となっています。まとめさせていただきます。

<アライの薬理作用ならびに発売までの経緯・要指導医薬品について>

アライ(一般名オルリスタット)は脂肪分解リパーゼに結合し不活性化する事により脂肪分解を阻害します。その結果脂肪の一部が吸収されずに便の一部(60㎎で約25%、120㎎で約30%カット)として排出されます。オルリスタットは最近の薬剤ではなく1997年8月に初めてアルゼンチンで承認医療用医薬品として承認を受け、100ヵ国以上で承認を受けています。医療医薬品の半分量(120㎎の半分の60㎎)が一般用医薬品として2007年2月にアメリカで承認され70ヵ国以上で承認されています。じつは日本において同様の薬剤(セチリスタット)が肥満症治療薬(2型糖尿病及び脂質異常症を共に有し、食事療法・運動量を行ってもBMI25以上の肥満症に限る)として2013年に製造承認がおりましたが、保険医療上の必要性から薬価収載されず変換となった歴史があります。そのため製造承認・薬価収載の見込みが難しい為、アライは病院で処方される薬剤ではなくOTC(Over the counter)医薬品(薬局・薬店で購入できる)の中でも要指導医薬品として発売されます。保険の補助がなく自費で購入する必要がありますが、薬局などで購入することが出来ます。ただし要指導医薬品のため薬剤師による紙面を用いた情報提供ならびに適正使用の確認が必要になります。アライ使用前に使用可能かのチェックシートで確認し、継続にあたりチェックシートを2回目以降購入時にも確認が必要になります。また生活習慣記録シート(食事内容・運動内容・腹囲・体重)に記録することが必要になります。

<アライの適応について>

同系統の薬剤のセチリスタットが肥満症治療薬(2型糖尿病及び脂質異常症を共に有し、食事療法・運動量を行ってもBMI25以上の肥満症に限る)として2013年に製造承認されるも薬価収載がおりず、返還された経緯は上記に記載しました。そのため肥満症治療薬ではなく、肥満+病気をもつ肥満症の前の生活習慣病予防医学としての立場肥満治療薬(内臓脂肪減少薬)としてアライが使用可能となっています。体重を減らすのではなく生活習慣病(メタボリック症候群)の予防のため内臓肥満の改善を目的としています。高度肥満(BMI35以上)、肥満症の方は使用できません。高血圧・糖尿病・高脂血症・高尿酸血症・脳梗塞・心筋梗塞や狭心症・脂肪肝・睡眠時無呼吸症候群など加療中の方は使用できないことになります。以下に適応について記載します。

  • 成人(18歳以上)
  • 腹囲:男性で85㎝以上、女性で90㎝以上(メタボリック症候群の内臓肥満)
  • 3ヶ月以上前から食事・運動の改善に取り組んでいる
  • 特に1ヶ月前からの食事・運動の取り組みの記録がある(薬剤師による確認)
  • 肥満症(下記に記載)は適応外

肥満症

  • BMI>25に下記1つ以上を満たすもの
  • 耐糖能障害 (2型糖尿病・耐糖能異常など)
  • 脂質異常症
  • 高血圧
  • 高尿酸血症・痛風
  • 冠動脈疾患
  • 脳梗塞・一過性脳虚血発作
  • 非アルコール性脂肪性肝疾患
  • 月経異常・女性不妊
  • 閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群
  • 運動器疾患 (変形性関節症:膝・股関節・手指関、変形性脊椎症)
  • 肥満関連腎臓病

<オルリスタットの価格>

  • 18カプセル(6日分) 2530円
  • 90カプセル(30日分) 8800円

<オルリスタットの効果・注意事項について>

前述しました通り、アライでは食事中の脂肪を約25%カットすることにより吸収する食事のカロリーを抑える事により内臓脂肪を減らす可能性があります。ではこの25%について考えてみようと思います。通常食事として三大栄養素(蛋白・脂肪・炭水化物)を摂取しています。蛋白質から15%(13~20%)・脂質25%(20-30%)・炭水化物60%(50-65%)の割合で摂取しているとされます。平均の脂質25%とすると食事総摂取カロリーの約6%をカットする計算になります。2000kcal/日の食事をされている方では120kcalをマイナスにすることができます。しかし1600kcal/日の方であれば約100kcalがマイナスとなり、摂取カロリーが減れば薬効からマイナス効果は減少します。脂肪を少なくとる方(炭水化物が多いなど)は効果が少なく、脂肪を多くとる方はマイナス効果が大きくなる一方で副作用の脂肪を含んだ油漏れなど症状が悪化する可能性が高くなります。あくまで生活習慣改善のサポートの薬剤であり、内服すれば食事・運動を注意しなくても脂肪が減る薬剤ではありません。総食事摂取カロリーが増えず、1ヶ月-100kcal/日が続けばひと月に3000kcalをマイナスにすることができ、脂肪量として約400gを減らす可能性があります。しかし余分に摂取(菓子パンなど1個余計に摂取すると+300kcal)すると100kcalはすぐになくなり、逆に体重が増えることもあります。内服による過剰な期待からの生活習慣の悪化には注意する必要があります。

<個人的に思う長続きする体重管理の方法>

脂肪を減らすためには、総摂取カロリー量<消費カロリーの基本原則は必須です。消費カロリーは基礎代謝と運動量・食事摂取内容で決まります。現在の消費カロリーを推定して食事摂取カロリーを調整する必要があります。世の中にはいろいろなダイエット方法の情報が溢れていますが、どの方法でも摂取カロリー<消費カロリーのルールさえ守れれば体重は減ります。ただ実際に体重がへるかどうか・行動を継続できるか・行為が容易かどうか・リバウンドしやすいかなどはやり方で変わってくると考えます。短期間で数値としての結果を求めると、必然的に結果を出しにくい・継続しにくい・リバウンドしやすい状況に陥りやすいと考えます。食事だけでカロリーバランスをマイナスに持っていくことを考えると、必要な栄養素を食事から補う事が難しくなります。簡単に薬で結果を期待したくなる場合もありますが、摂取カロリーには十分注意し運動などの消費カロリーUPを無理なく生活の中に組み込んで継続できることが大事と考えます。食事で-200kcal/日ではなく食事で-100kcal/日・運動で-100kcal/日の合わせて-200kcal/日の方が継続は容易と考えます。アライを試して生活習慣病対策する場合には、過剰に食事だけでのマイナスを考えず運動と併せて適正体重に近づけるようにすることが重要と考えます。前述しました通り糖尿病・高血圧・高脂血症などの生活習慣病を診断されている方はアライを使用できません。しかしアライを使用しなくても食事を気を付けることで脂肪減少は可能です。生活習慣病前段階の内臓肥満の場合にアライを使用することにより、内服時に脂質の取りすぎた場合には油便が多くなるため、食事摂取状況の指標として理解し食事を見直す(基本脂質を抑える食事)きっかけになると考えます。現在の推定消費カロリー・三大栄養素の摂取バランス・継続できる運動など疑問などございましたらご相談させていただきますので、お気軽にお声掛けください。

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