<SGLT2阻害剤>
SGLT2阻害剤は2014年から使用可能になった薬剤です。通常腎臓の尿細管で再吸収され尿へ糖が漏れないようにSGLT2という蛋白質が働いています。SGLT2阻害剤はこの蛋白質の働きを抑えて一日60~100gの糖を尿へ放出する薬剤です。イメージとして一日で菓子パン1個分を尿から捨てると理解しやすいです。ただ肥満症治療薬としての適応はなく2型糖尿病(一部の薬剤には1型糖尿病にも保険適応あり)の治療薬です。海外の臨床研究では健常者に使用した場合に2.8㎏(12週間・平均体重101.3㎏・プラシーボ群1.1㎏減少)体重が減少しますが減量効果としては強くありません。
インスリン分泌には作用しないため単独使用では低血糖のリスクは少ない薬剤です。血糖管理改善・体重減少・血圧低下の効果があり、最近では心不全や慢性腎臓病にも保険適応となり病態を改善する可能性があります。
ただし副作用として糖質不足・エネルギー不足からケトーシス・ケトアシドーシスや筋肉量が減少するサルコペニア・脱水症(場合により腎機能障害)のリスクがあります。また尿糖が増える薬剤のため性器染症や尿路感染症のリスクが増えますので注意が必要です。
病態を正しく判断して適切に使用すると非常に効果的な薬剤ですがむやみに使用することはリスクと思われます。
<アライ>
内臓脂肪減少薬アライ(一般名:オルリスタット)が要指導医薬品として2023/2に厚生労働省から製造販売承認された様です。要指導医薬品は病院で処方される薬剤ではなく、薬局で購入できる薬品になります。効能効果は腹部が太めな方(腹囲:男性85㎝以上、女性90㎝以上)の内臓脂肪および腹囲の減少(生活習慣改善の取り組みを行っている場合に限る)となっています。アライは脂肪吸収阻害作用をもつオルリスタットを有効成分とした内臓脂肪減少薬です。オルリスタットは消化管管腔内で脂肪分解酵素であるリパーゼの活性を阻害し、食事由来の脂質の吸収を抑制します。消化管からの油の吸収を抑えることにより体重減少につながる薬剤です。
過去に他製薬会社から同様の薬剤発売が期待されましたが、保険診療の薬剤として効果が十分ではなく認可されなかった経緯があり、医療用医薬品ではなくOTC製剤(処方箋がなくても薬局で購入できる市販薬)として販売される背景もあるようです。ただしオルリスタットは120㎎錠剤が医療用医薬品として100か国以上で承認され半量の60㎎が一般用医薬品として70か国以上で承認されています。食事療法・運動療法を行い、オルリスタット内服で体重管理・内臓脂肪減少につながる可能性が高いと考えます。
副作用は下痢(油もの摂取が多い場合には脂肪便の増悪)であり、食事内容によっては対策が必要な場合もありそうです。サプリメントや薬剤でも効果がある以上、100%副作用なく安全という事はありません。
注)2023/9時点ではまだ薬価や発売日は不明です。