生活習慣病(糖尿病・高脂血症・高血圧症・高尿酸化粧・肥満症など)に対して食事療法は基本の骨格となります。医療者がどのように総摂取カロリーを決定しているか説明させていただきます。
摂取エネルギー量や三大栄養素の摂取目標はすべて標準体重(BMI22)から決定されます。いわゆるリスクが少ないとされる体重がベースになっています。
- 標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22(kg/m2)
- 摂取エネルギー量(kcal)=標準体重×身体活動量
<身体活動量(係数)について>
- 25~30 軽い労作(デスクワークが多い職業)
- 30~35 普通の労作(立ち仕事が多い職業など)
- 30~ 重い労作(力仕事が多い職業など)
例)標準体重60㎏、軽い労作の場合には1500~1800kcal/日となります。
三大栄養素は炭水化物・蛋白質・脂質の3つに分類されます。上記で決めた摂取エネルギー量をどのような割合で食事として摂取するか決めていきます。炭水化物は指示エネルギー量の50~60%、蛋白質は標準体重1kg当たり1~1.2g、残りを脂質(約25%)で摂取するように推奨されています。炭水化物50%は昨今の糖質制限を受けて60%から50%も認めると追加された割合になります。ただし肝機能・腎機能低下している状態では医師の判断で蛋白摂取を少なくしたり、膵炎や腸炎の場合には脂肪は少なく指示されます。
例)標準体重60㎏ 摂取エネルギー1680kcal(係数28)の場合
- 炭水化物 1000kcal (60%) C/E 60%
- 蛋白質 240kcal(標準体重×1g=60g) P/E14.3%
- 脂肪 440kcal F/E26.2%
糖尿病患者様へ食事摂取カロリーを決める際に従来25~30の係数の中から決める事が多いと思います。25は肥満合併あり体重減少が必要な場合、体動かす仕事をされる人には30など体格や仕事からなんとなく指導の際に係数を決めています。今まで私は中庸の28をベースに計算された数値ならびにその端数を体格などから増減して調整してきました。基本的に多くの場合には問題ないのですが、一人一人に応じた食事設定ではなく、こうあるべきという理想からの設定のため受け入れにくい場合があります。また人によっては外れてしまう可能性があります。ここで問題とおもうことを少し記載させていただきます。
<問題点>
1)摂取カロリー設定:あくまで標準体重からの総摂取カロリー決定となっています。仮に体重が多い場合には痩せてくださいとう意味もありますが、現状の消費カロリーとかけ離れた設定であると逆に体調を崩してしまう可能性があります。また標準体重は係数22とされていますが、人によって変わってきます。具体的には筋肉量が多い場合に筋肉量まで落とす必要がない場合などは大前提が変わってきます。標準体重を前提とした摂取カロリーを念頭に置き、安静時基礎代謝・一日消費カロリーを考慮した設定を考える必要があります。病気の方は決まったカロリー設定という考え方ではなく一人一人に応じた設定を考えて説明しないと受け入れや実施は不可能と考えます。
2)蛋白質の不足:三大栄養素の蛋白質摂取の目安は標準体重当たり1~1.2gが推奨されています。標準体重60kgの方であれば60~72g/日の摂取となります。上記摂取カロリーの設定で標準体重×係数25~とされますが仮に30で計算した場合1800kcalで蛋白/総エネルギー比率は240kcal/1800kcal=13.3%となってしまいます。総摂取カロリーと蛋白質の摂取割合が理想から離れてしまいおおむね不足する設定が多くなります。厚生労働省から発表されている国民健康・栄養調査では平均70g/日を超えていますが、若年~中年を中心した女性やほぼすべて男性では摂取量が不足しているとされます。現在は1950年代と同程度で1970~2000年の80g以上摂取からはだいぶ低下しているようです。蛋白摂取は総エネルギーの13~20%を摂取が推奨されており、50~64歳では14~20%・65歳以上では15~20%と年齢が増えると摂取を推奨されています。高齢になると筋肉分解が早くなり年に1-3%筋量減少するとされます。体力維持・筋肉量維持・体重増加しにくくするためには蛋白摂取が非常に大事になります。
一人一人に応じた食事目標(総摂取カロリー、三大栄養素のバランス)をを決めていく必要があります。一人一人の体格(体重・筋肉量・脂肪量・骨格筋の過不足)や身体活動レベルや腎機能・肝機能を考慮し健康でいるためのベストな食事を可能な範囲で継続することは将来の健康に大きな差が出てくると考えます。